◆ 事業戦略最前線
 
TOP事業戦略最前線TOP>2008年10月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)
社内保育所でパートの雇用確保に効果
                            
◆◆ 
京葉流通倉庫(株)の場合 ◆◆

2008年10月



 地域によっては労働力不足が深刻化している。人手確保の具体的な対応策としては高齢者、フリーター、女性の雇用がポイントになる。このうち女性労働力の活用では、女性ドライバーを採用する場合でも、女性のパート採用においても働きやすい労働環境、労働条件の整備が重要になる。とくに物流センターの作業現場を支えているのは女性のパート労働といっても過言ではないからである。だが、この女性パートの確保も地域によっては難しい。荷主の物流センターや事業者の物流センターなどが集中している地域などでは、募集してもなかなか応募者がこないといった状況になっている。ところで、女性のパートも大きく2つの層に分けて採用対策を考える必要があるだろう。子育て中の女性と、子育てが一段落した年齢層の女性では労働時間など働ける条件が異なるからである。子育て中の女性の方が年齢的には若いが、一般的に働ける時間帯などに制約が多い。

 このような中で、昨年9月から物流センター内に事業所内保育所(許可外保育施設)を開設して、子育て中の女性パートの確保に努めているのが京葉流通倉庫(本社・埼玉県戸田市、箱守和之社長)である。同社は倉庫業、貨物自動車運送事業、通関業、物流システム開発(3PL)、流通加工、物流機器販売、損保代理店などを行っている。取扱貨物は書籍・出版物関係、食品関係、ホームセンター向け商品、部品関係、日用雑貨、医薬品・同部外品、家具、玩具、装飾品、ペットフード・ペット用品、ディスカウントストア向け商品、穀物、化粧品、服飾品、農薬その他、多岐にわたる。08年3月期の売上高は約118億円で、倉庫部門が約60%、運送部門が約40%という売上高構成。従業員数は約200名で、パートが約700名いる。倉庫、物流センターでは多くの女性パートを雇用しているが、パートの募集が難しいと実感したのは3年半ほど前であった。

 同社では書籍や雑誌などの出版物を取り扱っている。荷主は版元(出版社)で、入庫受入、保管、在庫管理、手書き注文表の入力・出力、ピッキング、検品、出荷、配送、返本受入作業など一貫業務を受託している。これら書籍関係の業務は戸田市周辺の5カ所のセンターで行っていたが、分散していると非効率的である。そのため大型の戸田ロジスティクスセンター(TLC)を建設して05年4月から稼働を開始した。TLCは書籍専用センターで書籍関係の業務の集約化を図ったのである。集約化によって効率化は推進できたが、一つだけ想定外の誤算があった。それはパートの採用難である。TLCで必要とするパートの人数は300人ほど。5カ所のセンターで働いていた人たちの多くが、新センターで継続して働いてくれるものと思っていた。しかし、通勤時間が長くなるので通えないなど、様ざまな制約から働けなくなってしまう人たちが予想外に多かったのである。



 そこでパートを70名ほど募集したが、応募者が少なかった。TLCのある周辺は、荷主や事業者の大型物流施設が多くあり、パートの雇用需要が高い地域である。したがって求人誌などで通年で募集してもなかなか応募者が来ない。さりとて時給を高くすることはコスト的にムリである。そこで、人員の不足を人材派遣で対応したが、人材派遣会社も人員の確保が難しくなってきており、しかも派遣される人たちには経験の少ない人もいる。それに人材派遣会社に頼っていたのではコスト的にも高くついてしまう。このようなことから様ざまな方策を試みた結果、作業内容から若いパートの人たちを必要としてるが、子育てなど時間的制約のある人を確保するには保育施設が必要という発想に至ったのである。しかし、費用対効果はどうか、大企業ならともかく中堅事業者ではどうかなど、様ざまな面から検討した。その結果、昨年4月に「9月までにやろう」と決断したのである。

 戸田市の保育園課に相談したり、社内保育所を開設している大手事業者の話も参考に、センター内の食堂の一角を保育室に改造。備品も揃えて運営は専門会社に委託して昨年9月に開設した。8月末に出した募集広告から「TLCキッズランド」の開設を公示し、現在では15名の乳幼児が入所している。保育費用は民間保育所より安く、市営よりも少し高めに設定している。実際には企業からの持ち出しになるが、荷主企業関係者が視察にきたり、口コミによる宣伝効果など数値では表せない効果が出ている。募集効果も明らかで、同社は事務所のパートではスキルの高い乳児をかかえたような若い年齢の人を求めているが、応募者が集まるようになった。これからは人手の確保に様ざまな対応が求められるが、社内保育所もその方策の一つである。しかし同社では、費用対効果を数値のみで考えるならやらない方が良いという。最終的な判断は企業ポリシーということになりそうだ。(物流ジャーナリスト 森田富士夫)


Copyright (C) 2006 Nissin Kikaku Corporation. All Rights Reserved